このページの本文へ移動

都市づくり政策

東京都景観審議会【答申】〜東京における今後の景観施策のあり方について〜


第3章 今後の景観行政における政策課題と施策の方向性

2 今後の施策の方向性

(4)公共事業等と連携した地域の景観づくり

●提言

 道路や河川、鉄軌道などの公共施設は、都民生活や企業活動等に直接利便性・快適性をもたらします。また、長期にわたって利用されることから、地域の景観づくりに対し、大きな役割を担っています。特に、都が行う公共事業は、大規模で広域にわたるとともに、周辺地域における土地利用転換や街区の変更を伴うことが多く、地域の景観に大きな影響を与えます。
 今後、公共事業の実施に当たっては、機能性、経済性及び安全性などの視点と同様に、今まで以上に景観への配慮を重視する必要があります。地域特性を生かして、公共空間と建築物等の民有地の空間が一体となった、統一感のある景観形成を図ることが望まれます。

二重丸(公共事業に合わせた地域の景観づくり)

 幹線道路や鉄軌道、河川・運河の護岸などの公共施設は、都市空間の中で景観を構成する大きな要素です。
 公共事業により事業区域周辺の土地利用が更新される機会を捉え、都は、地元区市町村に対し、地域のまちづくりへの取組を促すことが重要です。区市町村は、公共事業施行者や地元住民と積極的に連携・協力し、良好な景観形成を図っていくことが望まれます。また、地域で合意した景観づくりのルールが都市計画や屋外広告物条例の活用により担保されるよう、都は、積極的に区市町村を支援することが必要です。
 さらに、都は、公共施設の管理者と地元区市町村が互いに連携・協力し、将来にわたって良好な景観の形成を図れるよう支援していくことが重要です。

(具体的な取組例7)

二重丸(公共サインや屋外広告物などにおける景観配慮)

 東京の公共サインは、来訪者はもとより、都民にとっても分かり易さの配慮が十分といえず、雑然とした景観の一因となっています。都民への分かり易さや観光まちづくりの視点、統一感のある街並みの形成を図る観点から、公共サインのデザインや色彩、文字の表示などについて検討する必要があります。
 また、地域の顔となる区域において、屋外広告物条例に基づく地域ルール(注18)の適用を普及させるため、都は、情報提供や技術的支援などを通じて区市町村による地域のまちづくりを促すべきです。
 さらに、ラッピングバスなど動く広告媒体は、街並みの景観に大きな影響を与えます。都民などの意向の把握に努め、街並み景観との調和が図れるよう、フォローアップしていくことが重要です。併せて、新たな媒体を使用する屋外広告物の取扱い等についても、個々に対応するのではなく、景観面への影響を踏まえ、屋外広告物の総量を適切にコントロールするなど、総合的な視点から検討を行っていくことが望まれます。

(具体的な取組例8)

(公共事業の景観づくり指針の積極的な活用)

 「公共事業の景観づくり指針」は、景観への配慮に関する内容が網羅的・抽象的であるために、具体的な事業化の段階で十分活用されているとは言えません。
 このため、都は、景観配慮事項の客観化、具体化を図り、公共事業者にとって活用しやすい指針とする必要があります。また、事業の計画段階から景観への配慮を明確にすることは、都民の理解と協力のもとに公共事業を円滑に進めていくためにも重要です。
 さらに、公共事業の実施に合わせ、周辺のまちづくりに取り組む区市町村に対しても活用しやすい指針としていく必要があります。

(大規模構造物における景観配慮)

 高速道路のジャンクションなど大規模構造物は、広域的な都市基盤として機能を発揮するために必要不可欠な施設ですが、一方で、その立地特性や規模等から地域の景観に大きな影響を与えます。こうした施設の事業化に当たっては、環境対策と同様に事業の計画段階から景観への配慮について検討することが望まれます。
 そのため、「公共事業の景観づくり指針」の内容を客観化・具体化し、これを活用することで景観に配慮した計画を実現していく仕組みについて検討すべきです。また、必要に応じて、景観の専門家など第三者の意見を参考にし、景観への配慮を行っていくことも重要です。

(電線類地中化の推進)

 電線類の地中化は、景観形成に関して都民の関心が高い事業です。都内では、都心などの幹線道路を中心に事業が進められており、これをさらに推進することが求められています。しかし、住宅街などにおける電線類の地中化は、埋設スペースや事業費の確保が困難なことから、なかなか進んでいません。
 幹線以外の道路を対象とする電線類の地中化については、例えば、都が土地区画整理事業を行う機会などを捉えて、都・地元区市町村・電線管理者など関係者間で連携して検討していくことが望まれます。これに合わせ、都は、面的に地中化を推進するため、国庫補助金の対象となる要件の拡大や財源の確保について、国に対し強く要望していくことが必要です。

【施策の具体的な取組例7】
都市計画道路整備に合わせた沿道景観づくり

(1)ねらい
 幹線道路の整備により、沿道の土地利用が更新される機会を捉えて、道路空間と沿道の土地利用が調和した統一感のある美しい街並みを形成する。

(2)具体的取組

  • 都は、例えば、豊島区南池袋地区、府中所沢・鎌倉街道沿道地区など、幹線道路の整備に合わせ沿道のまちづくりが見込まれる地域を対象に、建築物の高さや色彩、屋外広告物の表示など、まちづくりのルールづくりを働きかけ
  • 地元区市町村と連携し、街区再編まちづくり制度(注19)、街並みデザイナー制度(注20)、屋外広告物条例の活用などを通じて、地域住民が主体となった取組を支援
  • 地元区市町村等に対して、再開発等促進区を定める地区計画(注20)、景観地区などの都市計画や街並み景観ガイドラインの策定を促して、まちづくりのルールの担保を図り、道路空間と一体となった沿道の景観づくりを誘導

【沿道まちづくりの連携イメージ】

イメージ図

写真写真

良好な沿道景観のイメージ

【施策の具体的な取組例8】
公共サインの指針づくりによる統一感のある景観の誘導

(1)ねらい
 都や区市町村、公共的団体が設置する公共サインのデザイン、表示などに統一感を持たせ、都民はもとより来訪者に対しても分かりやすい都市づくりを進めていく。

(2)具体的取組

公共サイン指針の策定と活用

  • 公共サインの設置者や管理者、商店街などの地元団体による調整の場を設け、デザインの統一や分かりやすさについて検討し、指針として取りまとめ
  • 公共施設管理者が異なる場合であっても、指針を活用し、連携のもとに統一感のある公共サインの設置を促進

モデル地区における重点的な取組

  • 浅草・両国地区など、都の観光施策として重要な地区をモデル事業の対象として、地域特性を踏まえた統一感のある公共サインを整備、誘導し、良好な景観形成を実現

【公共サインを統一する視点】

円滑に案内誘導できる表示、わかりやすい体系、地域らしさの演出

【取組のイメージ】

公共サインの指針づくり

モデル地区における取組み


注18 地域ルール:各地域の景観特性にきめ細かく対応していくため、特定の区域における地権者等は、都の方針に即して、当該区域の広告物のルールを定めることができる。

注19 街区再編まちづくり制度:平成15年3月に、東京のしゃれた街並みづくり推進条例が制定され、同年10月より施行となっている。地域の創意工夫を活かした、個性豊かで魅力のある街並みを形成していく制度として、1街区再編まちづくり制度2街並み景観づくり制度3まちづくり団体の登録制度が創設された。
街区再編まちづくり制度の概要:参照。

注20 街並みデザイナー制度:地元のまちづくり協議会や地元区市町村が中心となり、専門家である街並みデザイナーとともに、地域特性を活かした街並みづくりを自主的に進めていくことができる制度。
街並み景観づくり制度の概要:参照。

注21 再開発等促進区を定める地区計画:工場跡地や農地などの低・未利用地において、道路や公園などの都市基盤と建築物の一体的な整備により、大規模な土地利用の転換を図り、土地の有効利用、老朽化した住宅団地の建替えなどの開発誘導を目的とする。都市計画法に基づく地区計画。

目次へ戻る ▲このページの頭へ