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都市づくり政策

東京都景観審議会【答申】〜東京における今後の景観施策のあり方について〜


第3章 今後の景観行政における政策課題と施策の方向性

2 今後の施策の方向性

 ここでは、今後の主要な政策課題を踏まえ、具体的に取り組むべき4つの施策分野を提言し、それぞれについて取り組むべき施策の方向性を示します。
二重丸の項目については、施策の具体的な取組を例示しています。)

(1)美しさと風格を備えた都市空間の形成

●提言

 都心部は首都機能を担う東京圏の中心にあり、日本の政治・経済を牽引する高次の中枢管理機能とともに、居住、商業、文化など多様な機能が集積しています。
 近年、国際的な都市間競争の激化を背景に、民間による老朽オフィスの建て替えや充実した公共交通網等を生かした大規模な市街地の再開発が進んでいます。
 21世紀の国際社会の中で、東京がその存在感を発揮していくためには、都心部における機能更新に合わせて、質の高い多様な機能の集積を図るとともに、都市としての美しさと風格を備えることが必要です。

二重丸(首都東京を代表する建造物の眺望の保全)

 国会議事堂や神宮外苑絵画館など、我が国の近代化の過程で、首都東京の象徴性を意図してつくられた建造物は、その周辺を含め、今日でも風格ある景観を形成しています。このような建造物を中心とした眺望が、超高層建築物などにより妨げられることがないよう、建築活動の自由とのバランスを考慮しつつ、建造物の周辺で計画される建築物を適切に誘導することが必要です。

(具体的な取組例1)

二重丸(総合設計制度などの活用による景観誘導)

 建築基準法に基づく総合設計(注12)は、敷地内に一定の公開空地を確保することを条件に建築規制を緩和し、都市づくりに貢献する良好な建築物を誘導する制度です。これにより、歩行者空間の拡大や都市型住宅の供給などが図られてきました。しかし、容積率緩和等により、地域特性にかかわらず高層建築物の建設が可能となることから、中には敷地周辺の街並みとの調和に欠ける例も見られます。
 総合設計制度の適用に当たっては、敷地内における公開空地の確保に加え、地域性を考慮した建築物の高さや色彩、屋外広告物の表示などについて計画段階から事業者と協議し、景観面からも良好な建築物を誘導していく必要があります。
 また、他の都市開発諸制度(注13)の運用に当たっても、同様の考え方に基づき、景観面に配慮しつつ計画を誘導していくことが重要です。

(具体的な取組例2)

(大規模プロジェクトにおける景観配慮)

 都市機能の更新が進む都心部では、国際ビジネスセンターとしての機能集積とともに、歴史や文化の蓄積を生かした緑豊かで風格ある都市景観の形成が重要です。都市再生の機会を的確に捉えて、美しい都市空間の形成を積極的に誘導していく必要があります。
 大規模な再開発事業などについて、都は、土地を有する地権者や地元自治体、事業者などと連携し、例えば、水辺に近接する地域では、内陸側から水辺にアクセスできる通路や、眺めを楽しめる緑地・広場の整備を誘導するなど都市づくりの目標を踏まえた地域像を実現していくことが必要です。
 こうした取組において、景観への配慮事項を明確にするため、景観の専門家など有識者の助言を参考にできる制度の構築が望まれます。

(首都高速道路の更新等に合わせた日本橋川の再生)

 これまでの都市づくりは、経済活動の効率性や機能を優先してきました。例えば、日本橋の上空を覆う高速道路など、歴史や文化に十分な配慮がなされてきたとは必ずしもいえない状況です。
 現在、日本橋川沿いの大手町では政府機関移転跡地を対象とした都市再生プロジェクトが進められています。このようなプロジェクトを適切に誘導し、都市再生や交通機能を担保しつつ、歴史・文化資産に配慮した水と緑の連続する景観形成を図っていく必要があります。また、国や地元自治体、都民などの意向を踏まえつつ、首都高速道路の更新や河川改修による親水化といった公共事業などにより、長期的視野に立って水辺空間の再生を図っていくことが望まれます。

【施策の具体的な取組例1】
首都東京を代表する建造物の眺望の保全

(1)ねらい
 国会議事堂や神宮外苑絵画館などとその周辺地域を対象とし、風格と歴史を感じさせる首都東京を代表する眺望を保全する。

(2)具体的取組

  • 眺望の対象となる建造物について、誰もが容易、かつ効果的にその眺望を得られる地点と景観への配慮が必要な区域を設定
  • 建築物などの高さ、色彩、屋外広告物の表示など景観への配慮基準を設定し、都市計画の策定や建築基準法に基づく許可の考え方に反映
  • 施策の実施に際しては、規制区域や内容等を客観的に明示し、都民や開発事業者等に対して十分に周知
  • 眺望の保全対象としてふさわしい建造物や地域について、都民などの意向を把握することも検討
【眺望の対象となる建造物の例示】

写真
国会議事堂

写真
迎賓館

写真
神宮外苑絵画館

【眺望保全のイメージ】

イメージ図

【施策の具体的な取組例2】
総合設計制度などの活用による景観誘導

(1)ねらい
 総合設計など都市開発諸制度の運用において、建築物の高さ、デザイン、屋外広告物の表示など景観への配慮が必要な事項を事前協議の対象として、周辺市街地と調和し景観に優れた開発計画を誘導する。

(2)具体的取組

  • 建築物の色彩、屋外広告物の表示などについて配慮基準を設定し、都市計画の策定や建築基準法に基づく許可の考え方に反映
  • 特に総合設計制度については、区市町村における地区計画(注14)の策定状況などを踏まえ、都市計画マスタープランにおける位置付け、用途地域・容積率の指定状況等に応じて建築物の高さの目安となる基準を設定
  • 良好な景観に資する場合などには、景観の専門家など第三者の意見を参考に、目安となる高さの基準によらない誘導方法も検討
  • 施策の実施については、都民や開発事業者等に対して十分に周知
【景観誘導のイメージ】
誘導前のイメージ 【現 行】
→一定の公開空地が確保されれば許可
誘導後のイメージ 【今 後】
⇒許可基準を改正し、地域特性を反映
  • 建築物の高さ・デザイン・色彩
  • 空地・緑地の配置
  • 屋外広告物の表示方法など

注12 総合設計:一定規模以上の敷地を有し、かつ一定割合以上の空地を確保する有効な市街地環境の改善に資する建築計画に対し、その容積及び道路等の斜線制限を特定行政庁の許可で緩和することにより、土地の共同化等による有効かつ合理的な利用の促進と公共的空間の確保を図る制度。

注13都市開発諸制度:公開空地の確保など公共的な貢献を行う建築計画に対して、容積率や斜線制限などの建築規制を緩和することにより、市街地環境の向上に資する都市開発の誘導を図る制度で、再開発等促進区を定める地区計画、特定街区、高度利用地区及び総合設計がある。

注14地区計画:都市計画法に基づき、地区レベルの視点から、道路、公園等の配置・規模や建築物の用途・形態等について地区の特性に応じたきめ細やかな規制を行う制度。

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