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都市づくり政策

東京都景観審議会【答申】〜東京における今後の景観施策のあり方について〜


資料編

1 「中間の取りまとめ」に対する都民意見等の概要と答申の考え方

 昨年11月14日に「中間の取りまとめ」を公表するとともに、広報東京都、インターネット等により意見募集を行い、40件のご意見が寄せられました。
 また、区市町村や民間事業者に対しても、東京都が審議会事務局として意見照会を行っています。
 ここでは、主な意見の概要と、それに対する答申の考え方を紹介します。

(1)意見募集の結果

募集期間 平成17年11月15日から同年12月15日まで
意見総数
(内訳)
合計 77通
一般都民等 40通
区市町村 32通
民間事業者  5通

 

(2)主な意見の概要と答申の考え方

上段:都民等の意見
下段:答申の考え方

●「景観づくりの目標(第1章)」について

・都の施策の方向性よりも、10年後、20年後の国際都市東京のあるべき姿、グランドデザインを審議会の提言として示すべきである。
 本答申は、「東京の新しい都市づくりビジョン」や「都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」に示された長期的な視点に基づく都市づくりの目標を実現するため、今後の景観施策のあり方について提言しています。また、東京全体としての景観形成のあるべき姿等については、「東京都都市景観マスタープラン」に示されており、これらは、都や区市町村が景観施策を進める上での基本的な考え方となっています。

・都市活力の維持と良好な景観形成の両立が必要であり、そのような視点から景観づくりを進めていく必要がある。
 国際競争力を備えた魅力ある東京を実現するためには、都市再生を推進する中で良好な景観を形成していくことが不可欠です。都市機能の更新機会を捉えて、美しい景観をつくり出していくため、「首都東京を代表する建造物の眺望の保全」や「大規模プロジェクトにおける景観配慮」などについて提言しています。

●「これまでの景観行政の取組と課題(第2章)」について

・景観に関する視点が大きすぎるか小さすぎるかで、その中間のきめ細かい部分が抜けている。
 景観には、住宅地など都民に身近な街並みの景観や、河川や丘陵地など広域にわたる景観、東京や日本を代表する拠点的な景観など、様々なレベルがあります。
 本答申は、一つの区市町村の区域では捉えられない広域にわたる景観や、東京や日本を代表する景観などに焦点を当て、施策の方向性等について提言しています。

●「今後の景観行政における政策課題と施策の方向性(第3章)」について

・景観への配慮基準や規制内容などについて、事前明示性を高めるなど、透明性・客観性のある枠組みの提示が必要である。 ・景観への配慮については、専門家など第三者を入れた組織を設置し、審議・審査する必要があると考える。 ・産学官の共同による中立性を保った景観評価手法を開発していく必要がある。
 今後の景観施策の実施に当たっては、景観への配慮基準などについて客観化を図り、都民や開発事業者等に対して事前に十分な周知を図っていくことを提言しています。また、立地特性や規模等に応じて、景観や歴史の専門家など第三者の意見を参考にする仕組みを検討し、透明性・客観性を高めていく必要があるとしています。

・景観施策への都民参加・参画や、都民との協働という視点が欠落している。景観の持つ意義を啓発するなど、都民の参加や関与を促進・支援する方策に力点を置く必要がある。
 今後の景観施策の実施に当たっては、都民等の意向を把握するよう努めるとともに、規制等を伴う場合は、その内容等について事前に十分周知していくことが必要です。また、地域における身近な景観づくりについては、地区計画や景観地区の策定主体である区市町村が中心となり、都民や関係する民間事業者等とともに検討していくことが望ましいとしています。都は、これらの取組に対し、技術的な支援等を行っていくことを提言しています。

・広域的な視点で景観づくりに取り組んでいく都の役割として、もっと人々への理解や議論を呼び起こすため、景観づくりの見本となるようなモデル地区での整備を行っていくことが必要である。
 具体的な取組例の中で地名や建造物名等を挙げ、景観誘導の手法等について示しています。「文化財庭園等の周辺の景観誘導」や「公共サインの指針づくりによる統一感のある景観の誘導」などで、モデル的な取組を提言しています。

・屋外広告物についてゾーニング規制とデザイン規制を徹底してもらいたい。また、デザインについて審査を行った上で、掲出の許可をするようにしてもらいたい。
 屋外広告物は、街並みの重要な構成要素であり、景観に大きな影響を与えます。良好な景観形成を図るためには、屋外広告物条例に基づく地域ルールの活用や、公共サインの統一、新たな媒体を使用した屋外広告物の取扱い等について検討を行うことが必要です。
 また、大規模開発における屋外広告物表示の配慮や、具体的な取組例として、「公共サインの指針づくりによる統一感のある景観の誘導」を提言しています。

○美しさと風格を備えた都市空間の形成

・東京を緑豊かな都市にするため超高層ビルの建設を推進する。
・歴史的建造物の保全も重要な視点だが、都市機能の更新に合わせて新しい都市景観をつくり出す視点も重要である。
 国際競争力を備えた魅力ある東京を実現するため、都心部の機能更新の機会を捉えて、美しい都市景観をつくり出していくことが重要です。歴史や文化の蓄積を生かした緑豊かで風格ある都市景観の形成を目的として、「大規模プロジェクトにおける景観配慮」など取り組むべき施策の方向性を提言しています。

・総合設計制度の活用に当たっては、地区計画制度等を活用し、地域特性を踏まえた建築物の高さ等の基準をつくる仕組みが必要である。 ・地域特性に応じた施策とすべきであり、数値による一律的な基準(高さ規制等)は避けるべきである。
 景観面からも良好な建築物を誘導していくためには、地域性に考慮し、建築物の高さや色彩、屋外広告物の表示などについて、計画段階から事業者と協議していくことが望まれます。
 また、総合設計制度の適用に当たっては、区市町村による地区計画の策定状況などを踏まえ、都市計画マスタープランにおける位置づけ、用途地域・容積率の指定状況等に応じて建築物の高さの目安となる基準を設定するなど、良好な景観を誘導する仕組みの構築を提言しています。

○歴史・文化の継承と観光資源としての活用

・古い文化の保存だけでなく、日本文化を継承する新しい景観を考えてほしい。 ・古い街並みや、緑、屋敷などの保存に努めるとともに、観光資源として活用していく視点も必要である。 ・「国際都市東京」とするためには江戸の風情や下町の良さ等地域独特の景観が重要視されるべきである。
 大名屋敷跡を引き継ぐ大規模公園・緑地や近代化の過程で築かれ現存する歴史的建造物などについて、保全策を強化するとともに、観光資源としての活用を図っていくことを提言しています。

○景観の骨格となる緑や水辺の保全・再生

・個の景観を線から面へとつなげていくような景観のネットワークを考える必要がある。 ・私有地の小さな緑についても、その価値を尊重し、守り育てる制度を構築すべきである。
 都内に点在する公園・緑地をつなぐ河川・幹線道路等の公共施設における緑化の推進や、周辺の民有地における緑の計画的な保全・創出など、大きな水と緑のネットワークを意識した景観づくりに取り組んでいくことを提言しています。

・隅田川にかかる勝鬨橋などを観光資源として活用すべきである。
 勝鬨橋など歴史的建造物に選定されている橋は、水辺の景観に風格を与え、観光上も重要なランドマークです。このため、主要な眺望地点を定め、そこからランドマークの背景となる地域の建築物等ついて景観上配慮すべき基準を定め、眺望地点からの景観配慮を要請するなど、良好な景観を誘導していくことを提言しています。

○公共事業と連携した地域の景観づくり

・都市計画道路とその沿道地域が一体となった街づくりを積極的に誘導し、世界を代表する都市景観を創造していく必要がある。 ・幹線道路沿道の建物高さ規制、外観の統一、色彩の統一などを図っていく必要がある。
 都は、幹線道路の整備に合わせ沿道のまちづくりが見込まれる地域を対象に、建築物の高さや色彩、屋外広告物の表示などについてまちづくりのルールづくりを働きかけるなど、道路空間と沿道の土地利用が調和した統一感のある街並みを形成していくことを提言しています。

・目標やルールの策定に当たっては、個々の区市町村の考え方がまちまちとならないよう、検討段階から都が加わって調整すべきである。併せて、景観づくりに関与する民間事業者(企業)と協調して推進することも必要である。
 東京全体として良好な景観形成を進めていくために、都は、広域的な視点に立ち、東京における景観施策を牽引していくことが重要です。このため、区市町村が広域にわたる景観を施策の対象とする場合には、関係自治体相互の取組に整合が図られるよう、都は区市町村に対する調整、支援を積極的に行うことや、また、事業の実施に当たっては、計画段階から事業者を含む関係者と十分協議し、良好な景観を誘導していくことを提言しています。

・幹線道路だけではなく、住宅街などの道路についても電線類を地中化し、電柱を撤去してもらいたい。
 電線類の地中化は、都民の関心が高い事業です。現在、都心などの幹線道路を中心に事業が進められていますが、それ以外の道路についても区市町村や電線類管理者などと連携し、検討をしていくことを提言しています。

●「施策の具体化に向けた体制づくり(第4章)」について

○都の役割と区市町村との連携

・景観行政団体への意向のある区市町村の取組を推進するとともに、都は速やかに協議・同意すべきである。
・景観行政団体になる旨の市区町村の協議・同意を積極的かつ速やかに対応することを明記すべきである。 ・都は区市町村に対し積極的に景観行政団体となることを働きかけるべきである。
 区市町村が景観行政団体となる意向を都に示した場合は、東京全体の都市づくり政策、景観形成の方向と整合性の確保やこれまでの都の景観施策、今後の取組との連携・協力などについて、区市町村と十分調整を図ることを提言しています。

・23区を1つの景観計画区域として高さ制限を含む景観計画を都が策定すべきである。 ・景観法を活用し、強制力のある景観形成政策を積極的に進めるべきである。
 景観法の活用について、都と区市町村は、互いに齟齬なく、施策を効果的に行えるよう、十分協議・調整を行い、適切な役割分担に応じて施策を推進していくことを提言しています。

・地元自治体などによる地域での取組も重要だが、広域的な景観づくりに取り組む都の役割も重要である。 ・広域自治体である都が景観づくりの大枠をつくり、区市町村がその枠のなかで独自性を発揮していくことのできる仕組みづくりが必要である。 ・行政境で景観の不統一が生じないよう、都が基本的な枠組み、方針を示すことが必要である。 ・都は、各地域の個性ある街並みや歴史的景観を守るため、自治体に任せるばかりでなく、後押しすることも必要である。
 一つの区市町村を超える景観形成とともに、都市計画などの許認可を通じて首都にふさわしい風格ある都市づくりを推進するなど、東京全体からみて広域調整が必要な課題への取組の強化を提言しています。また、都は、区市町村による地域特性を生かした景観づくりに対し、広域的な施策との整合を図りつつ支援すること、東京における景観づくりの推進に当たっては、施策の整合性を確保するため、区市町村と連携・協力しつつ施策を効果的に実施していく必要があるとしています。

○地域の景観づくりに対する支援

・住宅地の住環境、及び自然環境に対する取組がほとんど見られない。東京を経済活動の場であるという視点を優先するあまり、人々の生活の場であるという視点が欠落している。 ・都心部の再開発ではなく、住民の安全や健康など生活に密着した地域の景観づくりに方向転換すべきである。 ・地域の個性が生かされる街づくりをするため、地域に住む人たちの声が反映しやすいシステムづくりが必要である。 ・住民に身近な景観は、区市町村が住民と一体となって取り組み、広域的な部分は、都を中心に関係区市町村が連携して進めていくことが重要である。
 都は広域的な自治体として、一つの区市町村を超えるような景観づくりなど、東京全体から見て広域調整が必要な課題への取組を強化すべきと提言しています。一方、都民にとって身近な景観づくりは、区市町村による地域に根ざした取組が効果的であるとし、都は、その取組を支援していくこととしています。

・多摩地区の田園風景を大切にし、高層マンションを許可しないでほしい。
・農地・里山など自然環境を保全していく仕組みづくりが必要である。
 都市に存続する農地は、地域住民に快適な環境を提供し、うるおいや安らぎを与える景観であるため、積極的に保全していく必要があります。
 そのため、地域特性に応じて景観への配慮基準を客観化・重点化し、景観誘導を図っていくことを提言しています。

・日暮里の「富士見坂」など、「見られる」対象だけではなく、そこから「見る」資産についても考えてほしい。 ・国分寺崖線から富士山を望む風景を保全すべきである。
・眺望に係る土地所有者の税負担軽減などの支援策が必要と考える。
 都は、区市町村に対し、富士山を望める場所の保全や眺望を楽しめる場所の整備等について 促す一方、一つの区市町村を超えて広域的な調整が必要な事項については、都が主体となり、関係する区市町村と連携・協力していくことを提言しています。


2 東京都景観審議会諮問文

16都市建市第429号
東京都景観審議会

東京都景観条例第44条第1項の規定に基づき、下記のとおり諮問する。

平成17年1月24日

東京都知事 石原 慎太郎

1 諮問事項

「東京都における今後の景観施策のあり方について」

2 諮問理由

 東京都は平成9年に景観条例を制定し、景観の骨格となる丘陵地や崖線、河川などにおいて建築・開発行為を適切に誘導するなど、東京を特徴づける地形や自然の保全に努めてきた。また、都心の機能更新を進めながら、風格ある街並みを生かしたまちづくりに取り組んできた。
 一方、都市再生を目的とする民間開発の推進等を通じて、都市の活力や利便性がもたらされる中で、都心部の街並みは近年、その姿を大きく変えつつある。良好な景観を形成するためには、民間開発の適切な誘導のみならず、公共空間の整備と一体となった取組が重要であり、さらに、観光まちづくりの側面からも、景観施策により地域の魅力を維持・向上していくことが求められている。
 東京都は、こうした社会経済情勢の変化に的確に対応し、景観法の施行など国の動向をも踏まえつつ、実効性のある景観づくりを推進していく必要がある。
 このような認識の下、これからの東京の景観施策のあり方について、貴審議会のご意見をお示し願いたい。

3 東京都景観審議会委員名簿

二重丸:会長
丸:副会長
選任区分 氏名 現職等
学職経験を有する者
(7名)
 荒 秀 荒秀法律事務所所長
 今井 澄子 (株)今井澄子デザイン事務所代表取締役
 篠原  修 東京大学大学院工学系研究科教授
副会長進士 五十八 東京農業大学造園科学科教授
会長戸沼 幸市 早稲田大学名誉教授
 西村 幸夫 東京大学大学院工学系研究科教授
 樋渡 達也 元武蔵野美術大学大学院非常勤講師
都民
(3名)
 小松 敬 足立区在住
 佐藤 美玲 目黒区在住
 花房 敦子 西東京市在住
事業者
(3名)
 田中 常雅 (商工部門)
 佐藤 和男 (都市開発部門)
 稲垣 道子 (設計部門)
区市町村長の代表
(3名)
 桑原 敏武 渋谷区長(特別区長会)
 馬場 弘融 日野市長(東京都市長会)
 石塚 幸右衛門 瑞穂町長(東京都町村長会)

4 審議経過

平成17年 1月24日 第20回東京都景観審議会
  • 東京における今後の景観施策のあり方について(諮問)
平成17年 6月23日 第21回東京都景観審議会
  • 多摩部など緑地における景観施策について
  • 都心部など市街地における景観施策について
  • 都の景観施策について
平成17年10月21日 第22回東京都景観審議会
  • 公共事業と連携した景観づくりについて
  • 東京における今後の景観施策のあり方について
    (中間の取りまとめ案)
平成17年11月14日 東京における今後の景観施策のあり方について
中間の取りまとめを公表
平成17年11月15日
  〜同年12月15日
中間の取りまとめに対する都民意見等の募集
平成18年 1月31日 第23回東京都景観審議会
  • 東京における今後の景観施策のあり方について
    (答申)

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