東京都では、昭和56年以来、概ね10年間で優先的に整備すべき路線を選定した「区部における都市計画道路の事業化計画」を策定し、都市計画道路の計画 的、効率的な整備に努めてきました。その結果、放射・環状の主要な幹線道路については、その6割が完成し、都市の骨格的な道路ネットワークを形成しつつあ り、交通処理機能のみならず、都市の防災性向上への寄与など、着実に成果を挙げています。
現行の第二次事業化計画(平成3〜15年度)は、いわゆるバブル経済の崩壊という未曾有の経済情勢の急激な悪化を受け、着手率が5割にとどまるなど、当初の目標には至りませんでした。
そこで、東京都と特別区は、この機会を捉えて、東京を取り巻く社会経済情勢等を踏まえ、区部における都市計画道路全体の新たな整備方針の策定に取り組むこととしました。
検討の過程では、平成15年3月に「中間のまとめ」を、さらに、平成15年12月に「区部における都市計画道路の整備方針(案)」をとりまとめ、公表す るとともに、都民の皆様からご意見を頂きました。その後、頂いたご意見も参考に検討を進め、この度、「区部における都市計画道路の整備方針」を策定いたし ました。
今後、この整備方針に基づき、都市計画道路の整備を着実に進め、計画的かつ効率的に道路ネットワークを早期に形成し、首都東京を魅力と活力あふれる都市へと再生してまいります。
社会経済情勢の変化、首都東京が目指すべき将来都市像等を踏まえ、区部における道路整備の推進に当たっての3つの基本理念と、それを具体化するための4つの基本目標を設定しました。
【3つの基本理念】
【4つの基本目標】
区部の都市計画道路について、東京の目指すべき都市づくりにおいて、今後とも必要性が認められるかを、4つの基本目標に対応して設定した評価項目を用いて検証しました。
(1)評価項目
1)自動車交通の混雑緩和への貢献、2)都市再生、拠点整備の推進、3)都市間物流機能の向上、4)延焼遮断帯の形成、安全な避難路の確保、5)震災時 の甚大な被害が想定される地域の防災性向上、6)地球温暖化の抑制への貢献、7)バス交通を支える道路網の形成、8)居住環境地区の形成、9)公共交通機 関や供給処理施設など他の都市基盤施設整備との連携、10)地域のまちづくりの支援
(2)都市計画の見直し候補区間及び見直しの方向性
前項の10項目のいずれにも該当しない路線を見直し候補区間として、選定しました。
○見直し候補区間
| 路線名 | 見直し候補区間 | 延長 |
|---|---|---|
| 補助92号線 | 環状4号線〜補助184号線 | 約2,520 |
| 補助178号線 | 補助94号線〜補助92号線 | 約570 |
| 補助188号線 | 補助92号線〜JR日暮里駅前付近 | 約460 |
| 補助164号線 | 環状5の1号線〜補助165号線 | 約1,280 |
| 補助52号線 | 補助217号線から西側の区間 | 約550 |
これらの区間については、平成16年度以降、地域住民をはじめとする方々からの御意見等も参考にしながら、地域のまちづくりを進めていく上で、ど のように都市計画の見直しを行うのが最も適切かを検討していきます。都市計画見直しの方向性が定まった後に都市計画変更等の必要な手続きを行っていきま す。
必要性が検証された路線の中で、緊急的に改善すべき都市課題に対応する観点から、2015(平成27)年度を目標年次とし、優先的に整備すべき路線、208区間約130kmを選定しました。
広域的課題に資する路線については、以下に示す定量的な評価を行い選定し、地域的課題に資する路線については、地域の課題を踏まえ、優先的に整備すべき路線を選定しています。
(1)定量的評価における評価項目
(2)具体的な整備イメージ
選定された路線の一部について、あらかじめ整備の方向性を示し、整備促進を図っていきます。
(3)整備効果の検証
現在のネットワークに加えて、現在事業中の路線及び第三次事業化計画の優先整備路線が完成したときの効果をアウトカム指標等を用いて試算しました。
1)自動車の平均旅行速度、2)物流の主要地点間の所要時間、3)沿道の土地の高度利用促進効果、4)骨格防災軸、主要延焼遮断帯に位置付けられている 都市計画道路の完成率、5)安全な歩行者環境の確保、6)自動車の走行による二酸化炭素排出量の削減率、7)みどりの創出効果、8)高次救急医療施設まで 10分カバー率、9)都市景観の改善
都市計画法第53条の建築制限について、区部においては一定の条件の下、緩和を行っていますが、都市計画道路の整備状況や木造3階建てが普及しつつある 状況を踏まえ、地権者の負担軽減を図るため、移転又は除却が容易であることを前提とし、第三次事業化計画の優先整備路線以外の区間について、3階建てまで の建築を可能とする新たな基準を設け、平成16年4月1日から実施していきます。
○新たな建築制限緩和の基準(概要)
当該建築物が、次に掲げる要件に該当し、かつ容易に移転し又は除却することができるものであること。
当該区間の事業の実施が近い将来見込まれていないこと(第三次事業化計画 優先整備路線外)
市街地開発事業(区画整理、再開発など)等の支障にならないこと
階数が3、高さが10
以下であり、かつ地階を有しないこと
主要構造部が、木造、鉄骨造、コンクリートブロック造、その他これらに類する構造であること
建築物が都市計画道路区域の内外にわたる場合は、将来において、都市計画道路区域内の部分を分離することができるよう設計上の配慮をすること
都市交通の円滑化や都市の防災性の向上を図るため、幹線道路がつながっていない区間を優先的に整備していく必要があります。そのため、限られた財源の中では、交通処理機能を一定程度有している概成道路を積極的に整備することは困難な状況にあります。
一方、歩行者の安全性・快適性の向上や魅力的な都市景観の創出など、歩行者空間の整備に対するニーズが高まっており、概成道路における歩行者空間の整備が課題となっています。
また、歩行者空間の整備については、これまでの道路整備といった方策に加え、民間との協同により整備されるケースも増えてきており、民間事業者の提案する良好なプロジェクトに対応した適切な支援策も求められています。
こうしたことから、東京にふさわしい歩行者空間を創出する新たな整備手法を検討しました。
(1)税の優遇をインセンティブとした歩行者空間の新たな整備手法(案)
都心部などの概成している都市計画道路の沿道において、建物のセットバックにより、既に歩道状の空間が実質的に確保されているような路線において、地権 者が敷地を無償で歩行者空間など公共の用に供することについて、一定のルールを定めることにより、固定資産税及び都市計画税を非課税とすることを検討して います。平成16年度より、モデル的な地域における試行など、制度化に向けた具体的な取り組みを実施していきます。
(2)立体都市計画制度を活用した歩行者空間の新たな整備手法(案)
服飾、雑貨等の店舗が並ぶなどしゃれた街並みを形成しつつあるものの、歩道が狭隘なため、歩行者空間の確保についてのニーズが高い箇所、もしくは、敷地 が狭いために都市計画道路線までのセットバックが困難な箇所において、立体都市計画制度を活用して1階部分を歩行者空間として確保するための新たな整備手 法を検討しています。
*概成道路
都市計画道路のうち、計画幅員までは完成していないが、ある程度の車線数は有するなど、概ね機能を満たしている道路。区部においては、計画幅員15
以 上の場合、現況幅員が計画の60%以上又は18
以上、計画幅員15
未満の場合、現況幅員が8m以上の道路をいう。なお、多摩では、現況幅員が8
以上 の道路をいう。
区部の都市計画道路は、戦災復興計画を基本とし、社会経済情勢を踏まえて、適宜見直しを実施してきました。今回の必要性の検証は、これまでの見直しの考 え方を引き継ぎつつ、社会経済情勢を踏まえ、新たな考え方も取り入れたものです。今後とも、大きな社会情勢の変化や地域的な課題への対応の観点から、適 宜、都市計画の検討を行うことが必要であると考えています。
優先整備路線については、その着実な事業推進に向け、これまで以上に都と区が緊密な連携を図るとともに、国に対しての税源の移譲や、補助金の適正な配分等を要求していきます。
事業費圧縮や整備期間の短縮策については、本方針で提案した新たな整備手法をはじめとし、更に創意工夫を重ねていきます。
今後は、都と区の役割に応じ、それぞれの特徴を活かした整備促進策に取り組めるよう、都市計画道路の施行主体を明確化するなど、都と区の連携強化に努めていきます。
都市計画道路については、長い歴史の過程の中で骨格的ネットワーク計画を堅持しつつも、時代状況を踏まえ、見直し、検証に努めてきました。今後の都市計 画道路に求められるものも、量的なストックに加え、都市景観や都市環境といった、都市の「質」の形成という新たなニーズが加わってきています。東京都と特 別区は、今後とも、次世代の要請に応え、快適な都市生活を実現し、持続的・発展的な都市を担う、都市計画道路行政に取り組んでいきます。